「未来とか、あるか!ぼけ~」
と、いう声が静かなBARの片隅で響いた。
何なんだろうあの二人は?かなり酔っているようだ
見るからにヤバい風貌、何者なんだろう? ヤクザ? ・・・😏
いやいや、今時ヤクザでもあんな判りやすい格好はしていないだろう。
そこへ来て、未来はないなんて・・・なんと後ろ向きなと言うか、夢も希望もない事を言う人だ・・・🤷♂️
それにしても、後ろ向きな事をすごい迫力で言う(ある意味新しい)という・・・、そのギャップに圧倒される。
するともう一人が「未来がないとか言わんといてくださいよ~、不安になるやないですか~」
そうだそうだ!もう一人の普通そうな人の言う通りだ!😌
「あほ~か! 未来も無ければ、不安もない!っちゅーとんじゃ~ぼけ~」ひっく🍶
ん?なんか更にわけわからん話になって来たぞ~ こういうタイプの人とは関わらん方が得策だな! 視界には入らないように気を付けないと・・・
「また富蔵(とみぞう)さんのあれがまた始まってもーた~」
あれってなんだろう? つーか、この人”富蔵さん”って言うんだ・・・名は体を表すと言うが、まさにそのまんまな感じ~😁。
「しゃーないやんけ! 無いもんは無いんや! アホンダラ~!」
「ごめんやで~お兄ちゃん、悪気はないんやで~この人、声が大きいだけで・・・ 」
と、もう一人の普通の人が私に言った。
咄嗟に「いやいや全然大丈夫ですよ」と、鼻の前で手を横に振ったが、内心、巻き添えになりたくない気持ちでいっぱいだった。😖
でも、不思議にもう少しこの富蔵さんの話を聞いてみたいという気持ちも同時に生まれていた。
「なぁ~オヤジ! 未来やら不安やらあるんやったら持ってこい!っちゅ~話やんけなぁ~」「もう一杯!」と言って、カウンターの上の段にワンカップを置く富蔵の腕から、チラリと刺青が見えた。
マスターも困った顔だが、富蔵さんとは長い付き合いの様で「何度も言ってると思うけど、ここは一応BARなんだからね~!富蔵さん」
と言って、ワンカップを奥へ取りに行ったようだ。
そうだよなぁ~、ワンカップは普通置いてないよなぁ~(一応アメリカンテイストのBARだもんねーここ)
「富蔵さんってねぇ~昔は鬼の富蔵って言って、地元じゃ知らない人がいないってほどの強者だったんだよ~」
と、普通そうな人が私に説明してくれた。
でた😟、いらない情報だし、見れば解るし・・・要するに関わってはいけない人って事じゃん。(カオルちゃんじゃん!リアルに)
「あんな~兄ちゃん」
兄ちゃんってほど若くないですが・・・って言うか・・・遂にこっちに話しかけてきたよぉ~😰
「こいつなぁ~、独立したいらしいねん!」「でもなぁ~根性がないんやって!アホやでほんまに~」
ふーんそういう話をしていたんですね!じゃーどーぞ、そちらでしてください。って言うかなんでこの人コテコテの大阪弁何だろう?などと思いながら、
へー😮って、驚いた顔をする私。(ザ・八方美人)😅
「ありもせんもんが怖いんやって! ほんで、おりもせん奴に毎日毎日ビビらされて、ビクビクしとんねん!」「アホやろ!こいつ」
だから~、私に話しかけないで欲しいんですけど・・・😅
「いやいや、そうとちゃいますねん! 失敗せんようにいろいろリスクヘッジちゅーもんを考えているだけなんですよ~! ピンチに陥った時でも臨機応変に対応するにはいろいろと想定しておかないと、事が起こってからアタフタして間違った対応をしてしまったらワヤですからね~! そこのお兄さんもそう思うでしょ!」
ええまぁ~・・・そうですよね、この人の方がまともな事言ってるんですけど・・・(それより、だんだん二人に巻きこまれている事の方が気になるんですが・・・)
「それがアカン言うてんねん!」「ええか賢二! お前がリスクなんちゃらとかピンチのなんちゃらとか言ってのは、なんの実体もあらへんねん!」「幽霊とケンカするようなもんや!実体のないもんどつけるか?」「ケンカはの~、想定なんか出来ひんのじゃ!ぼけ!出たとこ勝負が一番強いっちゅ~ねん!」
「いや~富蔵さんはすぐケンカに例えるから~」「でも富蔵さんかて、ケンカする相手見ながら考えるんちゃいます!?」「相手がチャカ持ってても、素手でケンカ売るんでっか?」
なんか物騒な話になってきたなぁ~ こう言う人達と一番話したくない内容だ・・・😅(つーか、もう一人の人ケンジさんって言うらしい)
「アホか!」「チャカ持ってる奴にケンカ売るか!ボケ!逃げるに決まってるやろ!」「だいたい俺はケンカなんて売った事あらへんど!買うてるだけや!しかも高値での~!がはははは! 上客じゃぼけ!」
「ですやろ~?」「しゃーから、チャカ持ってるかもしれんとか、ダンビラ(刃物?)持ってるかもとか、事前に考えるんは普通とちゃいます?」
「そこがアホや!って言うてんねん!」「そんなん事前に考えててケンカに勝てるか!アホんだら!」「ケンカの前に考えるんは、ケンカに勝つことオンリーじゃぼけ!」
おっ😮富蔵が”オンリー“とか言った。(似合わね~😅)
「だからですねぇ~、ケンカとビジネスは違うんですよ~」「富蔵さんは好きやけど、この話はじまったらほんまややこいねんなぁ~」
「まだ、解ってへんようやなぁ~ ケンカも商売も一緒じゃぼけ! 商売すんやってら、命かけて前に出るんや!それだけや!」「不安でもリスクでもええからあるんやったら、ここへ持ってこい!ほんで俺にみしてみぃ!ボコボコにいてもうたるワイ!」
はははは、水掛け論だなぁ~これは・・・😅
そんな会話が延々と続き、いつしか富蔵さんはグデングデンに酔っ払い、数々の暴言を吐きつつ賢二さんに連れられて、タクシーに乗り込んで行ったのであった。
ふ~、やっと静かに飲める・・・🤗と言う安堵感と共に、富蔵さんと言うチンピラ?(ごめんなさい😅)の言っていた事の本質を考える余裕も出来た。
富蔵さんの言っていた内容を私なりに整理すると、達磨大師と弟子達の一説が思い浮かんだ。
達磨大師はある時、弟子たちとの会話の中で「お前たちが言うその不安というものをここへ持って来て見せてみろ」と、いった。弟子たちは、そんなものは持てないし、見せられないと言うと、大師は「お前たちはその実態のない物を恐れ、実体のない物を避けようとしているんですよ」と、言ったらしい。
富蔵さんと賢二さん、どちらの言う事もわかる。
どちらかと言うと私は賢二さんと同じサイドから富蔵さんを見ていたから、無茶な事を言っていると思ったが(見た目はヤクザ(ちんぴら?)だしね!)
よくよく考えると、富蔵さんの言う事はシンプルに的を射てる意見かもしれない。
我々は「今」生きている。
けっして未来を生きる事は出来ない。
いくら綿密に予測をしたとしても、思い通りの未来が来ることはない。
だから、予測していろいろ考えをめぐらすことは無駄な事に等しいという事なのかな?
だから、それを富蔵さん流に言うと「未来はない」という事になるんだろう。
まさかゴリゴリのヤクザさんと達磨大師さんの言ってる事が同じとはねぇ~😂
でも、富蔵さん・・・
そんな風体と言い方じゃ・・・
伝わんないよ~・・・😅
と、これが、富蔵さんとの最初の出会いであった・・・